戦略と組織は、一般にチャンドラ-(Alfred D.Chandler)の有名な命題にみるように、「組織は戦略に従ってつくられる」という関係にある。 平成2年の文部省科学研究「超高齢社会に於ける病院の経営戦略に関する研究」において、同種類・同開設者・同病床規模では、経営戦略に関して、沖縄県の「高齢化社会」病院と「高齢社会」病院とに統計的に有意な差は見い出せなかった。只、超高齢時代において、沖縄県では、一般・国公立・大規模病院が、「環境適応型」戦略から「環境創造型」戦略へ担当移行し、他種類・他開設者・他病床規模の病院との水平統合戦略を策定し、また、一般・私立・大規模病院が、「環境創造型」戦略から「環境破壊型」戦略へ移行する可能性も考えられ、医療施設のみならず、保健・福祉施設との重直的統合戦略が策定される可能性をも示唆されうる。 超高齢時代に予測される新しい環境変化((1)老人患者の短期入院化(2)チ-ム、組織医療の徹底化(3)老人医療の高度化・専門化など)と上述の新しい経営戦略に適応しうる新しい病院の組織デザインは如何にあるべきであるかについて、以下、考察結果を記述する。 沖縄県に於いては、「高齢化社会」病院も「高齢社会」病院も、種類開設者・病床規模をほとんど問わず、組織デザインは、差別化、調整およびコントロ-ルを重視する官僚的組織モデルと医師個人の資格と専門能力を強調する専門的組織モデルが混然一体となっているように考えられる。両モデルとも一長一短があり、両者の長所のみ生かす組織デザインの構築には、ライン&スタッフ的思考からマトリックス的思考への発想の展開が必要であると考えられる。即ち、病院組織における管理的権限と専門職的権限の明確な分化と統合であるマトリックス組織である。
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