研究概要 |
上記課題の研究対象として,甲状腺手術検体から〓胞腺腫・〓胞癌・乳頭癌の計72例と対照の非腫瘍性病変26例を収集し,各例の結合組織性被膜と間質を中心に約2600枚の検体を作成,HE,vanGieson弾性線維,Alcian青等の染色および各種の抗collagen抗体免疫組織化学染色を行い,これらの染色性の比較所見と量形態測定値を求めdata baseとした。その分析から,当初の研究命題別に,1)乳頭癌と〓胞性腫瘍には,結合組織成分の構築と形状の差のみならず,組成collagenに顕著な差(I・III型の広汎な非特異的分布vs・IV型の層状分布)が認められ,両腫瘍特性との相関性(第80回日本病理学会総会で発表)とともに〓胞亜型乳頭癌の乳頭癌としての概念確立所見のひとつ(第24回甲状腺外科検討会発表予定)などを評価した。2)〓胞性腫瘍のなかでは,〓胞腺腫と進行〓胞癌のcollagen profilesと被包型あるいは微小浸潤〓胞癌のprofileに質的(IV型の有無とI・III型の分布)および量的(被膜厚とIV型の多寡)な差が認められ,修飾を加えた〓胞性腫瘍のadenoma carcinoma sequence考察に役立つ所見と考えられた(病理関係雑誌に発表予定)。しかし,3)乳頭癌と非腫瘍性病変の共通所見は非特異的因子にとどまり,これらをもって,末梢肺癌に提唱されている“癈痕癌"の概念を,乳頭癌に敷衍することの困難さを認めた。もっとも非特異的ではあるが,経時的な生体反応を反映する所見として,上記2)の考察に帰趨できる部分は少なくないと考えられる。加えて,4)IV型collagenの対照検体の腺様襄胞癌に特徴的な所見が確認出来,付隨研究成果としてその細胞診断学への応用および腫瘍の本質的構築分析に役立つ方法論をまとめた(第33回日本臨床細胞学会発表)。以上,腫瘍隨伴結合組織に形状構造上の差以上の腫瘍特異的な,診断学に応用可能な所見がいくつか認められ,崩芽的研究課題として,今後の客観的な組織形態学的分析・考察の礎となるdataが蓄積された。
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