研究概要 |
今年区は,平成2年度およびそれ以前からのデ-タを基に,(1)統計学的数値デ-タ処理,理論的デ-タ分析,(2)電顕検査による微細構造からの免疫染色反応デ-タの補完,(3)新たに抗エラスチン抗体を用いた検査所見の補完・追試などを行った。これらの結果に,考察を加え,以下の2点に論旨を焦り,研究業績として報告・発表した(裏面参照)。 ひとつは,従来から議論の多い瀘胞腺腫と早期瀘腫癌の鑑別に,腫瘍の浸潤特性は結合組織にみられる定量的所見から,(1)被膜の厚さを数値化し,浸潤特性との関連性を明らかにし,(2)被膜の結合組織成分の実質成分との相対部分の所見のとり方を実践面から理論づけ,(3)研究の過程で開発した“切り出し法"および多切切片の重要性・有効性を強調した。 ここでは,被膜の増殖が腫瘍成育に対するhostの反応という従来の仮説を数値的に裏づけ,浸潤特性の表現因子のひとつとして位置づけた。次の質的・組成別分析の礎となる研究成果も得られている。 もうひとつは,主にコラ-ゲン型分類により,いわゆる問質と被膜の差を明らかにし,弾性結合組織および基底膜様物質の分布を含め,瀘胞性腫瘍に特微的な被膜の存在を証明し,その成立機序も理論的に形づくった。コラ-ゲン・タイプIVとIおよびIIIが,この理論展開に有意な分布を示した点を基に,瀘胞性腫瘍と乳頭癌の本質的な結合組織成分の差を明確にし,診断学的に問題の少なくない瀘胞亜型乳頭癌をこの結合組織成分から位置づけた。さらに,瀘胞性腫瘍に伴う“被膜"部分の組成差と浸潤特性の関連性を捉え,前述の量的な差を質的に補完する結果を導くことが出来た。 なお,附髄的に,同様の検索から,特殊癌の腺様嚢胞癌と筋線維芽細胞から成る反応性偽腫瘍の病態を明らかにし,附加研究業績とし報告した(裏面参照)。
|