研究概要 |
甲状腺の瀘胞癌・瀘胞腺腫と乳頭癌を研究対象に設定し,それらに伴う『被膜あるいは被膜様基質を形成する結合組織成分』に着目して多角度から定量的ならびに定質的に検索をすすめた。この結果から,腫瘍に隨伴するこれらの結合組織成分には,腫瘍組織型および進行度に相応し,形態学的には微細な腫瘍上皮成分の浸潤・増殖様式をも反映する系統的な所見の差が存在することを明らかにした。 まず、『被膜』の共通構造所見を明らかにすることにより,被膜成立の概説が形態学的に始めて裏付けられ,いわゆる腫瘍基質や間質と異なる組成・構築が明らかにされた。一方,コラ-ゲン型分類により,腫瘍の浸潤特性に比例して,増量するタイプIとIIIの存在が一部で明らかになり,とくに定型的な被膜を有する瀘胞性腫瘍のなかでは,これらの増量していく所見から,いわゆるadenomaーcarcinoma sequenceを帰結出来た。 加えて,従来着目度の低いこれら非上皮成分からの鑑別診断,とくに瀘胞性腫瘍における難解な良悪性の区別,瀘胞亜型乳頭癌の瀘胞癌からの区別,に有用な所見が明らかにされ,微細な浸潤特性を表現する被膜の数量値的デ-タ,わずかな脈管浸潤に伴うコラ-ゲン型分類による反応分布所見などと合わせ,従来よりも感度の高い形態学診断基準が形づくられたものと考える。 本研究の主眼とする臨床病理形態診断におけるこれらの崩芽的知見の確立とともに,実践面においては,研究の過程で開発した“切り出し法"の有効性と応用性も確認でき,附隨的な研究としての筋線維芽細胞および腺様嚢胞癌にみられた新たな知見も有益なものと考えられる。 以上の結果は,考察とともに,国内の諸学会において発表し,欧文誌にその詳細を発表した(別紙参照)。その他,ペ-ジェット病・子宮腺筋腫・神経線維腫・副腎癌等についても応用研究として誌上発表した。
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