研究概要 |
看護界で「キャリア開発」が公的に表明されたのは、1977年のILOの看護職員条約勧告である。'80年代に入ってわが国でも論じられ始め、一般企業のCD論が盛んに紹介されてきた。しかし、男性/組織中心の理論が、そのまま看護職に適用できるのか?むしろ、Van Maanen & Sheinのキャリア立体論の有用性が示唆された。 幸い、戦後40余年を経て、多くの看護組織のトップが新制度看護教育修了者に世代交代する時代を迎え、ここに新しい「看護職」が、初めて職業としてのライフ・スパンを持つに至った。今日のような医療の一大変革期においては、看護婦のキャリア開発が一層図られる必要があるが、これまではスタッフ育成が中心課題であった。これら新制度看護教育を受けた組織のトップにある看護部長・副看護部長が、有職婦人としていかなる困難に出会い、それらをどのように克服し、自己のキャリアを発達させて今日に至ったか、看護職のライフコ-スの類型を知ることは、今後、積極的に組織成員のキャリア開発を進める上で重要なことと考えた。 そこで、全国国公私立大学病院及び附属施設を対象に実態調査を行った。施設回収率57%,既婚率は182人中97人(47%)と意外に高率であり、これを個人・家族・職業上の3側面からキャリア発達を分析した結果、4類型に分類された。ここに初めて看護職のライフコ-スが判明すると共に、キャリア立体論の有用性が実証された。「女性研究者のライフサイクル調査」(昭和57ー59年度科研費による)も、他の高学歴女性のライフコ-スに関するいくつかの報告も、女性の解放がなされた戦後初期からのものであり、同時代を生きた有職婦人として共通性を持つと同時に、職業特性も認められた。職業も家庭もという女性の職業意識の変化と共に看護教育の大学化、一般大学修了者の看護界への参入、養成所卒業者の大学・短大進学など看護婦教育の高度化・資質向上が伸展する中で、看護職のCDプログラムも多様化が要求され、今後ライフコ-スの類型が大きく変化するものと予測される。
|