今年度の研究の主眼はジゴキシン様免疫活性(DLI)物質についての基礎的研究においた。基礎検討ではDLIが血漿蛋白と強固に結合しているので、これを解離するためにSDSを用いたところ有用であることが判明したが、SDSが免疫反応を阻害するためにRIAが行えないために、血漿蛋白分離後にSDSを除去する必要が生じた。そこで、犬血漿を2倍に希釈して、最終0.1M濃度となるようにSDSを添加してフィルタ-を通して分子量1万以下のろ液を得た。これを凍結乾簡した後に再溶解して原液の約30倍に濃縮した液を100mulずつODSカラムを用いた逆相高速液クロマトグラフィ-を用いて分画してDLIを測定した。その結果、アセトニトリルの約18%と45%に一致してDLIが測定され、その後55ー60%にSDSが溶出され分離が可能であった。しかし、2つのピ-クの最終的な収量は約0.8pg/ml血漿であり、構造決定するにはあまりに乏しい量であるので、現在はこの時点で研究を休止している。他方、ジギタリス配糖体のナトリウムポンプ抑制活性部位を認識する特異性の高いモノクロ-ナル、抗ウアバイン抗体を作製して、RIAを確立した。現在、この方法を用いて、再検討を企画している。また、免疫織得化学の手法を用いてDLIの脳内分布と病態動物での変化を検討した。DOCAー食塩高血圧ラットの室傍核と視索上核を電気破壊して脳組識ならびに血漿と尿中DLIを測定したところ、それらの項目や血圧値では対照群との間で有意差がなかった。しかし、剖検後の組織検索では破壊部位が多くの例で小さかったり、変位していたために、否定的な成績の原因は手技にあると結論した。現在、再検討を行っている。また、抗ジゴキシン抗体は保存のめに、アジ化ソ-ダを添加しており、後者が血管拡張をきたすために生体に投与する際にはIgGとする必要があり、現在抗体の精製を進めている。
|