研究概要 |
(1)基礎検討ではレギュラ-インスリンを浸透圧ミニポンプに充填してラットの腹部皮下に埋没した。偽手術群とともに術後代謝ケ-ジに移して採尿とテ-ルカフ法による血圧測定を交互に隔日1週間測定した。その結果,血圧は2群間で有意の差を認めなかった。尿中ナトリウム排泄量は投与開始2日後にインスリン群で有意に高値を示したが以後有意差なかった。尿中ジゴキシン様免疫活性物質濃度(DLI)は6日後でインスリン群で高値傾向を示した。このことから、インスリンはナトリウム貯留をもたらすことが示されたが、対象動物は正常ラットであることからインスリンが低血糖をもたらし、交感神経活動の亢進を来してナトリウム利尿を抑制したことも考えられる。いずれにしても、貯留したナトリウムがDLIの放出を促す可能性が示唆された。 臨床的検討は2つの対象群で施行した。(1)入院患者で24時間尿を蓄尿させ、尿中カテコラミン、尿中Cーペプチド(CPR)、尿中DLIを測定した。その結果,DLI排泄量は拡張期血圧と相関傾向を示し、尿中CPR、尿中ドパミン(DA)、ノルアドレナリン排泄量などとも有意に相関した。また,CPRは尿中(DA)と有意に相関した。DAは一般にナトリウム利尿ホルモンの一つに数えられるようにナトリウム負荷で増量することから,以上の成績はCPRがナトリウム貯留と関係することを示し、更に、CPRとDLIが相関することからナトリウム貯留に反応してジギタリス様物質が増量し血圧を上昇させることを示唆する。(2)健康診断受診者の血液サンプルでDLI濃度とインスリン様免疫活性(IRI)を測定した。その結果,DLIは血圧値と有意に相関し,DLIはIRIとも相関した。以上は前述(1)の考察を支持するものと考える。
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