研究概要 |
1.Second messengerの役割(1)1,25(OH)_2D_3(D_3),TPAによりHLー60細胞をmoncyte系細胞に分化誘導させると細胞内遊離Ca^2濃度([Ca^<2+>]i)は1分以内というshort termでみても、3日間というlong termでみても上昇が認められた。又、[Ca^<2+>]iのshort termでの上昇はCa拮抗剤及びprotein kinase C(PKーC)阻害剤により抑制された。一方、Retinoic acidによりmyelo系に分化誘導された時には[Ca^<2+>]iに変化は認めれなかった。(2)増殖及び分化においてD_3に対する反応性の違うHLー60のsubcloneを用い、D_3を作用させた時の1,25(OH)_2D_3 receptor(VDR)mRNAとcーmyc mRNAの変化を観察したところ、VDR mRNAは分化と、cーmyc mRNAは増殖と関係がある事が示された。(3)PKーC阻害剤のK252aはHLー60の増殖及びDNA合成を濃度依存性に抑制し、各種分化誘導物質による分化誘導作用を増強した。(4)我々が樹立した骨髄性白血病細胞株TIー1はTPAによりmonocyte系細胞に、heminによりerythro系細胞に分化誘導され、それぞれ濃度依存性に細胞増殖が抑制される事が示された。 2.核酸代謝学的解析 ヒトのdehyrothymine dehydrogenase(DHTDH)の全塩基配列を決定する目的で、まずラット肝より塩谷らの方法を用いてDHTDHを精製した。精製した蛋白の断片より、アミノ酸配列を決定し、特異的塩基配列を合成した。このオリゴDNAを用いて、ヒトspleen DNA libraryよりスクリ-ニングを行い、DHTDHの全塩基配列を決定した。このDHTDH cDNA断片をprobeとしてHLー60,U937細胞のTPAによる分化誘導時のDHTDH mRNAの発現を経時的に観察したところ、mRNAの発現は分化誘導形質の発現よりも早い時期に起こる事が確認された。我々は既に、これらの細胞の分化誘導時にDHTDH蛋白量の増加が早期に起こる事を報告しているが、今回この蛋白量の増加はmRNAの増加によるものである事が明らかになった。
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