研究概要 |
1.肝障害モデルの作成:肝臓におけるリン脂質代謝を検討するために、ウサギ総胆管結紮、四塩化炭素投与による肝障害モデル、ラット肝切除後の再生肝を作成し、NMRスペクトロスコピ-の対象とした。 2.in vivo NMR:ウサギおよびラット肝臓用にそれぞれ ^1H、 ^<31>P二重同調の表面コイルを作成した。また、慢性の肝障害を追跡する目的で、wire lessの二重同調表面コイルを作成し、これをウサギ肝臓に埋め込んだ。それぞれ良好なin vivoの31PNMRスペクトルが得られた。これを独自に開発したソフトウェア-でphosphomoneester(PME),phosphodiester(PDE)等でピ-クに分解し、解析を行った。 3. ^1H decoupling:ウサギ用の ^1H decoupling coilを作成し、decouplingを試みたが、コイル大きさや出力の問題があり、decouplingについては、現在ラット肝臓を用いて検討中である。 4.in vitro NMR:肝臓組織をfreeze clampにて採取し、過塩素酸抽出液を270MHz高分解能NMR装置を用いて ^<31>Pスペクトルを測定した。ラット再生肝では、PMEのうちphosphorylethanolamine(PE)が約2倍に増加していた。 5.化学分析:リン脂質代謝に関連する物質では、PMEとして、PEとphosphorylcholine(PC)が、PDEとして、glycerophosphorylethanomamine(GPE),ーcholine(GPC)が知られている。PEとGPEはHPLCを用いて、PCとGPCは酵素法を用いて定量する方法を確立していた。同時に、phosphonergeticsに関するATP、ADP、AMP、もHPLCにて定量した。 6.比較検討:ラット再生肝を用いた実験では、ATP、PME(PE+PC)についてのNMRスペクトルは、定量分析結果とよく一致したが、PDEに関しては、in vivo NMRではそのピ-クは全体の20ー30%を占めるのに対し、in vitro NMR、定量分析のいずれでも5%以下に過ぎなかった。このことは、in vivo NMRを解析する上で留意すべき点である。
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