研究概要 |
ウィリス動脈輪閉塞症例に血管吻合術,及び他の頭盤手術時に得られた頭皮血管より,病理組織学的検索を行なうと共に,血管平滑筋細胞を培養し,その生物学的特性を比較検討した。位相差顕微鏡及び透過電子顕微鏡下の細胞の形態には異常がなく,Gーバンディング法による染色体の検索でも異常は認められなかった。経時的培養により,最終可能培養継代数より,培養細胞のエイジングを決定した。このエイジングを基礎とし,15%血清添加培養下における細胞増殖能を検討すると,本疾患由来の血管平滑筋細胞では,若い世代時の細胞において,有意の増殖能の低下が明らかとなった。増殖因子による細胞のDNA合成能を検討すると,血小板由来増殖因子に対する反応性低下が,ウィリス動脈輪閉塞症由来の血管平滑筋細胞に特徴であった。酸性,塩基性線維芽細胞増殖困るに対する反応性も同様に低下していた。また、上皮増殖因子,インスリン様増殖因子Iに対する反応性は、対照細胞と比べて,相異がなかった。血小板由来増殖因子の膜レセプタ-の検索を行なうと、本症平滑筋細胞では,有意のレセプタ数,結合能の低下が認められた。また,レセプタ-・リガンド複合体のインタ-ナリゼ-ションも低下していた。こうした結果は,本症血管平滑筋細胞で,血小板由来増殖因子のレセプタ-の発現異常を示唆している。また, ^<32>PーATPを使用し,増殖因子による、チロシン隣酸化を細胞膜において検討した。また,細胞膜よりSDSーPAGEにより,PDGFレセプタ-を取り出し,ウェスタンブロッティングを行なう事により、増殖因子レセプタ-異常の解明を試みた。今後は、TGFーβによる、PDGF,及びそのレセプタ-の誘導を検索する計画である。
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