研究概要 |
前年度の研究において,ウィリス動脈輪閉塞症患者由来の血管平滑筋細胞(SMC)を培養し,血清及び,PDGFに対する増殖反応性が低下していることを明らかにした。この所見は本症における内膜修復機転の障害を示唆すると考えられた。当該年度は,本症SMCのPDGF反応性低下の本態を明らかにすべく本症SMCにおけるPDGFレセプタ-の特性につき検討した。4℃,22℃のPDGFreceptor assayでは,EpEp病SMCにおいて,対照に比し有意にレセプタ数が低下していた。一方,解離定数(kd)には差がなかった。次いで,37℃における ^<125>ーIPDGFのKineticsを9時間迄追跡した。4℃におけると同様,peak receptor numberは本症SMCで低下しており,また,培養液中のTCA soluble froction(degradation)も本症SMCで低下していた。一方,単位レセプタ-毎に, ^<125>ーIPOGFのprocessingを検討すると,Internalization,degradation共に,対照SMCと有意の差を認めなかった。このことは,単位レセプタ-あたりのprocessingには異常がなく,細胞単位での ^<125>ーIPDGFのprocessingの低下は,レセプタ数の低下に起因していると推定された。更に,PDGFを37℃2時間作用させた後,緩除な酸処理を行ない, ^<125>ーIPDGFを結合させることにより,レセプタ-のダウンレギュレ-ションを比較検討した。モヤモヤ病SMCでは,低濃度のPDGFの処理により,対照に比し,高度にレセプタ-のダウンレギュレ-ションが生ずることが明らかとなった。以上の結果は,本症におけるSMCのPDGF増殖反応性の低下が、PDGFレセプタ-の数の低下(細胞単位)によって説明しうると同様に,レセプタ-発現のregulationの異常も存在し得ることを示唆している。また,SMCのこうした反応性の特徴は,本症での層状の内膜肥厚(緩徐な)を説明しうるものと考えられた。
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