研究概要 |
本研究は,音声獲得過程における音声使用の変化を調べるために,プロソディの変化に視点を当てて,乳児の音声の音響分析により,定量的解析,検討を行っている。 平成2年度までに,当初の目的である作業仮説1及び2,すなわち「発達の早期の段階で乳児は多様な高さ・強さで,多様の声質の音声を生成することが可能になる」,「乳児期8カ月齢から10カ月齢の発達段階において,児のプロソディは普偏的パタンから母国語に個有なパタンに展開する」の検証を行った。 作業仮説1に関しては,母児間での相互交渉場面を採録し,そこから得られた児の音声から,発声の長さ・潜時・基本周波数を測定し,サウンドスペクトログラムによる解析を行った。その結果,早期乳児は多様な高さ・強さ・声質の音声を生成することが可能であり,さらには対母親間での交渉場面ではプロソディの模倣傾向も示唆されるものとなってきている。 作業仮説2に関しては,母児両者の音声デ-タを月齢に沿って分類し,音声のピッチの基本統計量を求め,相互関係を検討した。その結果,乳児の音声のプロソディについては,語或いは語音様の音声ばかりでなく,歌唱行動ともみなすことのできる歌唱様の音声行動が観察され,言語獲得過程ばかりでなく音楽的発達研究においても意義ある知見を得られる可能性がでてきている。
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