我々は2年前、被験者に白黒の静止RDSを呈示し、呈示時から立体視に至るまでの眼球運動を計測した結果、たいへん興味深い結果を得た.そこで本年度、このRDSを動的(アニメ-ション風)に変化させた場合はどうなるか、またカラ-RDSを用いても同様なことが言えるかどうかを実験した.後者の実験準備として(1)赤外線TV眼底カメラ内の白黒TV(モニタ-)を平面性の優れた液晶カラ-TVを改造して入れ替えた.その際、画素数の関係で、複数のレンズを用いて最適なカラ-RDSの大きさに調節を行った.(2)PC9801パソコンと画像処理装置EXCELーIIを用いてカラ-RDSを生成し、眼底カメラ内の液晶モニタ-に送る.この際、RDSのタ-ゲット部(パタ-ン部)と背景とを異色にしたり、明度調節を行う必要があったので、ビデオ信号処理装置を試作した.まだ詳細な結果の解析はできていないが、簡単に実験した結果の傾向を述べる.(1)一般的な定説では眼球輻輳運動は立体視要因の一つであると考えられてきたのに対し、輻輳運動は左右対応点探索時には見られず、むしろ立体知覚後の立体保持過程に出現するという結果を静的RDSの実験から得た.このことは、動的RDSに対しても同様な結果が得られた.また、融像時の輻輳運動には、大きな視差に対してマクロな融像を助長する輻輳運動と、小さな視差の融像を助長する輻輳運動の2種類が確認された.(2)カラ-RDSにおいては、左右眼の背景色を同色として、タ-ゲット同士も同色で背景色と異色にした場合は白黒RDSと同じ反応の結果が得られた.また、左右眼の背景色とタ-ゲットの色を各種変化されて実験したが、色の組合わせで知覚が容易な場合と困難な場合とがある.現時点での中間的な結論として、色相の違いが多少の知覚過程に影響をおよぼすが、明度の違いが大きく影響しているように思える.
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