研究概要 |
従来,眼球輻輳運動は立体視要因の一つであると考えられてきたが,我々が2年前行った白黒RDSを対象とした実験から,この定説を覆すような実験結果を得た.今回,この実験をカラ-RDSにまで対象を広げ,色情報を考慮した立体知覚解析を行った. (1)今回の実験においては,最初に初期注視点を与えキャリブレ-ションを行った.そのため,この時点においてマクロな融像を助長する輻輳運動(保持運動)がすでに起こり,動的にRDSを呈示しても輻輳運動は見られなく,共同運動のみが現われた.注視点分布も全体的に小さい. (2)左右眼に背景とRDS部の明度を違えて呈示した場合は,左右画面の色相,輝度,コントラストが多少異なっていても,立体知覚は可能である.明度を等しくした場合は,ほとんど知覚することができなかった. (3)タ-ゲットが凸形状のRDSと凹形状のRDSでは,知覚できる時間は凸のRDSの方が早く知覚でき,学習効率も高い結果が得られた. (4)知覚後の注視点は,全てのRDS(白黒RDSも含め)においてタ-ゲットの境界付近に注視点を移し背景との確認がなされている. (5)動的に4枚の数字RDSを連続呈示し,その後に融像をリセットする初期注視点を挿入呈示したが,ある時間内では,この初期注視点は融像をリセットするのではなく,むしろ融像を持続させる結果となった. (6)(5)において,同一RDSの呈示回数が増すにつれて,注視点の分布範囲が小さくなっていく傾向にある.呈示される度に形状に対する学習が行われ,ミクロな対応点探索域に入り注視点が一定したものと思える.また,数字を知覚(認識)する上で,特に数字のどの部分を注目して観察しているのか一概には定まらなく,傾向としては一つ前に呈示されたRDSの注視点が,続くRDSの注視点に影響を与えており,できる限り注視点を動かさずに見ようとする傾向が観察された.
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