防寒的にみて高性能な被服材料は、厚くて軽いすなわち材料内で占める繊維の体積分率が小さいことが特徴である。このような低密度の被服材料の伝熱機構を理解するには、輻射による熱輸送の寄与が大きいこと、さらに材料周辺に速度場が励起された場合空気の移動に伴う熱輸送効果が大きいことなど特有の熱輸送の特性を数量的に把握、解明することがきわめて重要である。平成2年度に行なった研究において、輻射は、繊維直径の変化に伴う散乱や吸収面の面積変化の影響をうけ、さらに放射率は温度に強く依存するが、材料の中で、温度分布は、伝導と輻射の双方が関与するため線形的ではなくなることが分かった。これらの基礎的資料を中心に、被服材料の熱輸送特性の理解に必要な知見を、輻射による熱輸送について、材料のファクタ-を光学的厚さで規定して、その違いによる輻射熱流束の変化を理論的に計算し、実験結果と照合した。さらに繊維集合体の通気性に関する文献調査から、低密度材料では、通気に伴う熱輸送の数量的評価がきわめて重要であり、それにあたって半理論式を導入できる可能性を見いだした。平成3年度は、空気の流動にともなう熱輸送について、空気層の違いや通気にともなう熱輸送を繊維集合体について明らかにした。さらに、実用上の保温性評価を考慮した熱移動および通気のシミュレ-ション実験を、厚手毛糸類セ-タ-地を試料として行い、前半で得られた研究成果を土台にした適用を試み、多くの防寒用被服材料の熱輸送機構を理解し、評価できる基礎を得、本研究課題の目標達成をみた。
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