上記課題にしたがって、家族内的・社会的機能の観点から社会調査を行なった。つまり、(1)現在未成年の子供を持つ父親はどのような父親像を指向しているか、(2)また子供自身はどのような父親を「父親らしい父親」とみなしているのか、といった二点に留意した。 さらにその上に、(3)もし、父親の存在感が薄いように見えるとすれば、それは父親の役割についての、R.K.マ-トンのいう「観察可能性」「可視性」の低さのせいではないかと仮定して、「観察可能性」「可視性」の観点からも分析を行なうことができるような調査票を作成した。 実査要領は次のとおりであった。 期間:平成2年10月上旬〜中旬 調査対象:島根県益田市高津・益田東・東陽中学校の2年生生徒とその父親 調査票配布と回収:配布枚数361、回収枚数355、有効回収票330、配布数に対する有効回収率91.4パ-セント 現在までの分析結果 (イ)「リ-ダ-としての父親」となろうとする自覚は、父親のなかに見られる。また、子供たちも父親を「家族のリ-ダ-である」と認めている。(ロ)しかし、子供の行動様式や価値観・人生観にもっとも大きな影響を与えてきた人は、回答結果を見るかぎり、父親ではなく母親である。ここに、きわめて特殊日本的と呼ばれる典型的な親子関係像が浮び上がった。(ハ)その原因と仮定した「観察可能性」「可視性」の問題は次年度の分析によって明らかになるであろう。
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