昨年度、島根県益田市内の三つの市立中学に二年生として在籍する生徒とその父親361ペアを対象として行なった実態調査の集計デ-タに基づいて、今年度は、父親の回答と子どもの回答との比較分析、父親の回答と子どもの回答とのクロス集計分析を主眼にした。 その結果として見出した知見を以下に記す。 (1)子どもの社会化に必要とされてきた父親の役割について (1)社会的規範の指示・伝達者としての役割ー父親自身は役割を遂行しているつもりでいても、子どもからの「観察可能性」は低い。(2)社会的規範の遵守に関する裁定者としての役割遂行度の認知ー父子共に厳しい裁定者とはみていない。(3)「お手本を示す」役割ー父親はこの役割遂行を意図していない。(4)家庭生活の中心人関ー父親が中心人物。しかし、父親は母親ほど「頼り」にされていない。また母親ほど子どもへの影響力を持たない。 (2)父親の役割遂行に関する子どもの認知度に影響を与える要因について (1)父親の仕事についての見聞度、(2)父子間の時間・行動・コミュニケ-ションの共有、(3)母親の役割、(4)父親の役割の観察可能性の低さ、という4つが父親の役割遂行度を認知・評価する上で、子どもに大きな影響を与える要因であることが分かった。 (3)父親の権威や威厳の裏付けについて (1)一世代前の父親ー制度によって付与された権威を持っていたと評価される。(2)現代の父親ー制度的に付与された権威はない。自生的な権威も持ちえない。 【結論】:子どもの目から見た父親の存在感は、父親自身が何をするかではなくて、母親が父親の役割をどう評価するかにかかっている。
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