1住居「茶室のコスモロジ-」というテ-マで、桃山時代の住居がどのような意味を持っていたのかを明らかにした。その結果、近代の機能性を中心に考える建築学とは異なって、当時の住居は中国自然哲学(易)の宇宙観(コスモロジ-)に従って作られ、現代の住居でも意識される鬼門への配慮(気学)に理論的な支配をされていた。茶室の採光は、現代の建築学でも説明はできるが、当時の生きた人の感じ、考えたことを理解できないことが分かった。気学への配慮はミクロの茶室から、マクロの京都という都市までま一貫していることが発見された。 2食文化 従来は茶を食品学的に、また喫茶養生論のような禅的観点で、茶の薬効が述べられていたが、今回の研究では、気学と関連する陰陽五行説に従い、茶室と茶の関係を読み解くことができた。その結果、茶は聖なるものであるという当時の意識を発見することができた。これは茶をいわゆるナルコティックスと同じものとして見ることでは説明できないもの、江戸時代の茶壷道中が御三家以上の格式を持っていたことが説明できるようになった。 3服飾 このような茶を入れる茶壷が利休の侘び茶においてはルソン壷と呼ばれる地味なものであったのが、江戸時代初期となって仁清の華麗な茶壷が現われるようになる。この断絶を考察するうちに、平安時代の襲色目(かさねいろめ)という宮中の女官の着る有職故実に従った衣服の色の組合せが茶壷に配色されていることを発見した。 1の「茶室のコスモロジ-」は平成3年5月に日本家政学会(東京)で発表、2と3の茶と茶壷については上智大学人間学会大会(沖縄)で平成3年9月に発表した。1の茶室のコスモロジ-は東北女子大学紀要30号、2と3については上智大学人間学会紀要21(審査あり)に発表した。
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