研究概要 |
1.科学史の通説によれば、〈18世紀には科学の中心はフランスに移行した。イギリス科学は衰退し,産業革命は無学で科学とは無縁の職人によって引き起こされた〉,とされているが,A.E.MussonとE.Robinsonはその著Science and Technology in the Industrial Revolutionで膨大な資料に基き、これをくつがえした。私は,この著及び,E.G.R.Taylor,P.J.Wallisの著作(研究書)を手細に検討し,18世紀イギリス科学の主体的担い手であった「数学的実際家」と称された人々の身分,活動,研究内容について整理しつつある。とりわけその中核に位置していた装置製造職人、時計職人達は当時の科学の実験部門の担い手であり、彼らがどのような科学理解と認識をしていたかについて、現在原資料を集めつつあり、早々に明らかにまとめられる予定である。 2.彼ら(「数学的実際家」)がどのような教育,自己研究体制を持っていたかを教育史の関点で検討するためにN・Harsの著作を検討中である。とりわけ、近代的な科学・技術教育制度が未確立な時期における自生的な努力の形態を知ることは興味深い。 3.装置製造職人や時計職人が持っていた金属加工の精密技術を検討中である。最近実験技術についての歴史的研究は急速に進められており、G.L'E.Turnerの研究などに基づき、整理を行っている。とりわけ、この技術が、産業革命期の中核的技術として用いられていくことが明らかになってきた。 4.産業革命期にブ-ムとなったメカニックス・インスティテュ-ト運動についても現在資料を収集している最中である。
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