本研究の成果は、1.学校保健をとりまく保健・医療政策の形式・展開、2.制度として学校保健が成立する過程の問題、に関わる領域でのGHQ/SCAPの役割について、当時のPHW、CIE文書の翻訳を中心として、歴史的事実の確定に迫る実証を一定程度行なうことができたところにある。それは、(1)「学校給食実施の普及奨励について」の通達に至る過程の検討に限定しつつも、戦後の学校給食の復活には、GHQ/SCAPの並々ならぬ「意志」の存在がはっきりした点であるし、(2)「中等学校保健計画実施要領(試案)」作成までの経過においても、「アメリカ教育使節団報告」とそれを機軸としたGHQ/SCAPの、新しい学校保健構築に向けられた強い「意志」の存在がはっきりしたことである。 そして、「学校給食」に関わっては、戦後いち早く取り組まれた、栄養改善対策の諸活動におけるGHQ/SCAPの役割が決定的に大きかったことが改めて明らかになったし、保健所機構の確立は、日本における公衆衛生制度の実際的な運用を図る上ではもちろんのこと、学校保健が当然その内容としていた健康「管理」の側面で密接な関連をもっていたことも窺わせる状況が明らかになった。 もちろん、学校保健の確立そのものについては、GHQ/SCAPの「強制力」がどれだけのものであったのかなど、まだ確定的なものではない。つまり、日本側委員の具体的作業に負うところが大きいのであるが、それに対する「指導力」のある無しが、「強制力」の大小にかかわってくるものである。こうした点の解明は、今後の課題となるが、その準備資料は一定揃えることができた。
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