研究概要 |
I.カゼインキナ-ゼ(CKーII)特異リン酸化ポリペプチド(p98) CKーIIは、末受精射より高塩濃度(1.5MKCl)で抽出される。この粗抽出液中のCKーIIは,DEAEーcellulose,Sephacryl S_<300>,HeparinーaffinityおよびMono Qカラムクロマトグラフィ-(HPLC)によって高純度に精製された。精製CKーIIによって特異的にリン酸化されるDNA結合性ポリペプチドを検索した結果,分子量98kDaのポリペプチド(p98)の存在が認められた。このp98は、CKーIIと複合体を形成しており,各種卵より1.5MKClで抽出された。Heparinーaffinityカラムの後,DNAーaffinityカラムクロマトグラフィ-によp98は,CKーIIから分離された。精製p98は,(1)α_2β_2のサブユニット構成をしていること,(2)ヒストンやプロタミンなどの塩基性ポリペプチド存在下でのみCKーIIによってリン酸化されること,(3)精子プロタミンが最も有効な活性化因子であること,(4)リン酸化p98はDNAから遊離し,DNA polymerase活性を著しく促進させることなどが明らかになった。これらの実験結果から,p98は受精直後精子プロタミンによって活性化されたCKーIIによって特異的にリン酸化されてDNA合成開始に重要な応割を演じるものと考えられた。 II.p98の活性調節 p98は,CKーIIおよび分子量約53kDaのポリペプチドと複合体を形成している。プロタミン存在下では,CKーIIはp98を特異的にリン酸化するのに対し,ヘパリン存在下ではp53のみをリン酸化する。あらかじめp53をリン酸させておくとp98のリン酸化が抑制される。またがん抑制遺伝子産物であるp53の特異抗体によってもp53のリン酸化が抑制される。これらの実験結果を総合すると,DNA開始調節はp98とp53がCKーIIのリン酸化を介して調節されていることを示唆している。
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