概ね、当初の計画に従って、多プロ-ブ標識システムの開発が進行しつつある状況である。まず、合成有機化学的手法を用いることにより、標識試薬の調製を行なった。各合成段階の産物の検討から、当初の計画にほぼそのまま従うことによって、目的とする物質の合成が可能であることが判明した。次に、これをタンパク質とカップリングしたものによってマウスの免疫を行ない、常法に従って、ハイブリド-マの調製、スクリ-ニング、限界希釈法によるクロ-ニング、マウス腹腔への投与による抗体の大量調製等を順次行なった。得られたモノクロ-ン抗体数種について、さらに詳しい性質検討を行なっており、アイソタイプ決定等の通常行なわれている検討に加えて、抗体と抗原(標識試薬)の間の結合力の強さの定量的測定を行なう予定である。この目的のためには、前端アフィニティ-クロマトグラフィ-法の適用がきわめて有効と考えられる。ここでは、抗原を固定化したカラムに抗体溶液を一定濃度で流し続け、その溶出前端の位置から、解離定数等を求めることを試みており、予備的実験では良好な結果が得られた。従って、この方法が、モノクロ-ン抗体の抗原に対する結合力の強さを測定するための一般的な方法として確立することができる見込みである。さて、今後は、さらに数多くのモノクロ-ン抗体の取得を目指すとともに、多プロ-ブ標識システムの実用化へ向けて、残されたいくつかの詰めの実験を行なっていく予定である。
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