今年度の研究実施計画に従い実験を行なった結果、以下の結果を得た。1)ウサギ好中球をロイコトリエンB_4やplateletーactivating factorで刺激すると、NーformylーMetーLeuーPhe(fMLP)の場合と同様、ホスホリパ-ゼD(PLD)が活性化された。これらアゴニストによるPLDの活性化は、サイトカラシンBの存在下でアゴニストの濃度依存的に促進され、好中球機能の一つである酵素放出反応とよく相関した。エタノ-ルはアゴニストによるPLD活性化に伴うホスファチジン酸産生と酵素放出反応を抑制したが、後者における抑制程度は前者にくらべて小さい。以上の結果は、好中球の酵素放出反応にPLDの活性化が少なくとも部分的に関与することを示唆する。2)種々の細胞について報告されているように、ウサギ好中球においても、プロテインキナ-ゼC(PKC)の活性化剤であるホルボ-ルエステル(PMA)によりPLDが活性化された。ところが、PKC阻害剤のスタウロスポリンやHー7処理で、PMAによるPLDの活性化が著明に増大するという興味深い知見が得られた。このPKC阻害剤の効果は、fMLPによるPLD活性化においても同様に認められた。また、PMA前処理によりPKCを活性化させておくと、fMLPによるPLD活性化は抑制され、スタウロスポリンはPMAの抑制効果を解除した。以上の結果から、ウサギ好中球においては、fMLPやPMAはPKC非依存的にPLDを活性化し、活性化されたPLDはPKCによって不活性化されるものと結論される。さらに、ウサギ好中球のPLDの活性化は百日咳毒素感受性GTP結合蛋白質を介することが判明した。3)ラットおよびウサギ大脳皮質の膜結合性PLDは、低濃度(0.2%)のTriton Xー100により著明に活性化され、高濃度(0.5ー1%)のTriーton Xー100で可溶化された。Mg^<2+>やCa^<2+>は、Triton Xー100で活性化されたPLDを阻害した。このように、PLDの測定条件および可溶化条件も確立され、今後の精製への大きな手がかりが得られた。
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