研究概要 |
C4光合成に関与するホテホエノ-ルピルビン酸カルボキシラ-ゼ(PEPC)は光合成の盛んな昼間はリン酸化を受けて活性化され,夜間は脱リン酸化されて低活性型に戻ることが知られている。申請者らは,動物のサイクリックAMP依存性プロテインキナ-ゼ(AーPK)によってもPEPCがリン酸化を受けて同様の活性の変化がもたらされることを見出し,さらにリン酸化部位をSerー15と決定した。本年度は,まずトウモロコシ由来のプロテインキナ-ゼ(MーPK)も同じ部位をリン酸化するのか否かを調べた。MーPKはトウモロコシの緑葉より,硫安分画,ブル-セファロ-スカラムクロマトグラフィ-により部分精製し,PEPCの〔γー ^<32>P〕ATPによるリン酸化に供した。リン酸化したPEPCはトリプシンで消化し,C18シリカゲルを担体とするHPLCにかけて, ^<32>Pと含むペプチドを得た。このペプチドの溶出位置は,AーPKによって得られるペプチドと同じであった。さらにこのペプチドはTLCにおいても同じ挙動と示したことから,MーPKもSerー15をリン酸化することが強く示唆された。さらにトウモロコシPEPCのCDNAを発現ベクタ-に組み込んで大腸菌内でつくらせたPEPCについて,その諸性質とリン酸化を調べた。トウモロコシから採取したPEPCは暗条件下のものでも40%ほどリン酸化されていると推定されており,リン酸化を全く受けていないPEPCは大腸菌の組換え体を用いてはじめて可能となる。大腸菌から部分精製したPEPCはたしかに最も強い阻害感受性(アスパラギン酸やリンゴ酸がアロステリックな調節因子)を示し,リン酸化により顕著な感受性の低下と最大速度の増大がみられた。しかし現在のところ,大腸菌内での発現量が低く,これを基質としてMーPKの精製に用いるのは因難なようである。現在,リン酸化部位を含む合成ペプチドを調製し,基質となるが否かを調べている。
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