C4光合成に関与するホスホエノ-ルピルビン酸カルボキシラ-ゼ(PEPC)は光合成の盛んな昼間はリン酸化を受けて活性化され、夜間は脱リン酸化されて低活性型に戻ることが知られている。本研究は、このリン酸化の光による調節の分子機構について手がかりを得ることを目的とする。我々は先にトウモロコシPEPCが動物のcAMP依存性プロテインキナ-ゼ(AーPK)によってもリン酸化を受けて同様に変化し、リン酸化部位はSerー15であることを報告した。次いでトウモロコシ由来のPK(MーPK)を部分精製し、これによるリン酸化部位もSerー15であることをペプチド化学的に明かにした。PEPCは夜間でも完全には脱リン酸化されないため、完全に脱リン酸化されていると予想されるリコンビナントPEPCを大腸菌を宿主として調製し、その性質を調べたが、夜間型とさほど違わなかった。このPEPCもリン酸化のよい基質となったが、収量が悪いため、以後は夜間型を用いた。MーPKの種々のPK阻害剤に対する感受性を調べた結果、カルシウム依存性キナ-ゼである可能性が示唆された。さらにCa^<2+>のキレ-タ-であるEGTAも強い阻害効果を示し、阻害はCa^<2+>により解除された。Ca^<2+>依存性は外国のグル-プによる実験では検出されなかったとの報告もあり、現時点では定説はなく、両者の相違の原因を今後明かにする必要がある。我々の知見によれば、MーPKはCa^<2+>によって活性が調節されることとなり、光シグナルは細胞内のCa^<2+>濃度を上昇させることによって伝達されるという可能性が示唆される。現在、MーPKの精製を行うとともにその構造を明かにするため、cDNAのクロ-ン化を進めている。
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