研究概要 |
百日咳毒素(PT)処理でPT感受性G蛋白質の機能を特異的に阻害し、あるいはTPA長時間処理でCキナ-ゼをdown regulationさせたマウス、ヒト繊維芽細胞において,各ペプチド増殖因子の細胞増殖作用が無処理細胞の場合と比べてどのように影響されるかを検討した。その結果、(1)PT感受性G蛋白質、Cキナ-ゼは増殖シグナル伝達反応において同一系路上に位置し、連動してその機能を発現している、(2)そのシグナル伝達におけるPT感受性G蛋白質、Cキナ-ゼの関与により3つのグル-プ,(a)その増殖シグナルをすべてPT感受性G蛋白質,Cキナ-ゼを含む経路によって伝達するもの(スロンビン、ボンベシン、ブラジキニンなど)、(b)半分程度PT感受性G蛋白質およびCキナ-ゼの機能に依存してその増殖シグナルを伝達するもの(EGF,PDGF,バナジン酸ナトリウムなど)、(c)PT感受性G蛋白質、Cキナ-ゼの機能にあまり依存せず、それらとはほとんど無関係にその増殖シグナルを伝達するもの(FGFなど)、に分類することができることなどを明らかにした。 EGFやPDGFだけでなくリン酸化チロシンホスファタ-ゼの阻害剤であるバナジン酸ナトリウムの細胞増殖作用も部分的にではあるがCキナ-ゼの機能に依存することより、蛋白質チロシンリン酸化の促進とCキナ-ゼ活性化反応の間になんらかの「Cross Talk」があることが示唆された。特にこれら因子の増殖作用がPT感受性G蛋白質の機能阻害でもCキナ-ゼdown regulationと同様に抑制されたことは、上記2つの反応の間の接点がそれらのシグナル伝達反応においてG蛋白質よりも上流にある可能性を示唆する。現在この点については特にp21^<ras>ーGTPア-ゼ活性化蛋白質を中心として検討中である。
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