研究概要 |
本研究は、惑星探査及び宇宙ステ-ション建設の際に生じる、地球由来生物による宇宙環境の汚染に関して検索を行ったものである。もし、宇宙環境において地球生物が短時間に全て死滅するのであればなんら問題は無いのであるが、もしも、相当の期間生存が可能であるとすると、宇宙船の検疫が必要であろう。ましてや、宇宙線は強力な突然変異作用を有しているものが多いだけになおさらである。この問題はただ単に学問的な興味だけでなく、現実的な宇宙汚染という非常に危険な問題を含んでいると考える。我々は、模擬宇宙環境用のクライオスタットを考案し(100K〜500K,1x10 ^<ー8>torr)、さらに、東京工業大学所有のバンデグラフ型加速器によって、宇宙線の主成分である陽子線照射を行った。用いた生物はウイルスから細菌、放線菌、酵母、カビ、嫌気性菌、南極由来の藻類、さらに古細菌と、我々の環境に普遍的に存在しているものから、特殊環境でのみ生育可能なものまで広範囲に選択を行った。 その結果、タバコモザイクウイルス、ある種の球菌、枯草菌の胞子、黒カビの胞子、嫌気性菌の胞子、南極由来の藻類などは、宇宙空間で250年間に浴びると同量の陽子線を加速器を用いて1時間以内で浴びせたところ約10〜80%の生存が認められた。かかることにより、本研究の目的である地球環境由来の生物による宇宙環境汚染の起きる可能性を十分に示唆されたものと考える。ただ、最終的には宇宙ステ-ションなどを用いた暴露実験を行って、本研究結果と比較検討を行うことが必要であろうと考える。
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