研究概要 |
エネルギ-幅の極めて低い低エネルギ-高電荷イオンの生成を目的として、高エネルギ-重イオンを固体タ-ゲット表面すれすれに入射させ表面第一層の原子との電子捕獲・内殻電離過程にともなう多重電離により高電荷反跳イオンを得る手法を確立するため本研究課題を開始した。 当初の研究計画どおり、昭和六三年度に設置されたコッククロフト型タンデム加速器を活用して以下のように実験を進めた。 1.ビ-ムラインに新たに真空槽を設け、加えてイオン分析用に磁石を取り付けた。 2.この真空槽内に、本研究経費により設計製作した固体タ-ゲット装着部を、取り付けた。 3.既存の分子ビ-ムエピタキシャル装置に、本研究経費により購入した成膜コントロ-ラ-を取り付け、1原子層単位で金属を蒸着できるように改造した。 4.実験装置の組立を完了し、その性能試験を行った。 5.加速器で加速したCイオンを用いて、入射イオンエネルギ-、電荷を変えながら反跳イオンの電荷分布と収率の測定を目下進め、タ-ゲット:C,Al,Ti,Ni,Cu,Mo,W,Auについて系統的にデ-タを取得した。 予想したとおり高電荷の原子状ならびにクラスタ-イオンが効率よく生成された。本研究室で従来行ってきた気体タ-ゲットに比べ、固体タ-ゲットの場合は、クラスタ-イオンが非常に顕著に現れる。高エネルギ-重イオン照射による高電荷イオンならびにクラスタ-イオンの生成は、イオンー固体相互作用の根幹に関わる現象でもあり、さらに精度のよいデ-タを系統的に求めていく。
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