1.磁気感覚器官の解剖学的位置の決定 磁気感覚器官の主体をなす磁性微粒子は、し骨、前頭骨を含む前頭部と、脳を中心とする後頭部に多量に見いだされた。また、磁性微粒子に囲まれた新しい形の磁気感覚器官と思われる組織も脳の近傍から抽出された。以上により、器官の存在範囲はかなり狭められてきたので、今後は組織を溶解せず、組織固定して試料を作り、存在部位を確定する計画である。 2.磁気感覚器官の動作の解明 (1)モデル実験:先に見いだされた直径50nm程度の球状磁性微粒子に囲まれた楕円状のセルからなる器官を10万倍に拡大したモデルを磁石で作成し、これを磁界中に置いて磁界の方向や強さにより、モデルの磁石がどの様に振舞うかを検討した。この結果、当初予想したのとは異なり、磁気モ-メントが磁界と直交している部分の磁石が最も動き易いことが判った。今後は磁石の動きにより生じる力を定量的に評価する方法を確立し、実際に鮭の体内での磁気感覚器官としての動きを推定してみる計画である。 (2)計算機シミュレ-ション:前述の器官及び磁性微粒子が直線状に連なっている場合について、磁界中に於けるこれら微粒子の挙動を追求する目的で計算機によるシミュレ-ションが計画された。今年度はプログラム立ち上げのため、直線状微粒子鎖の場合についてのみ検討が行なわれた。この結果、予測された磁石の振舞いとシミュレ-ション結果との間には、定性的によい対応がみられた。次年度は更に複雑な形の器官について、その動作を検討する予定である。
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