大きく下記の3点の側面から研究を計画、実施に移している。 (1)バブル形成に関する理論的分析 ゲーム論を用いて協調解としてのバブル形成を検討中。 2年目の検討課題。 (2)バブルの計測 株価形成モデル(例えば配当割引モデル)を用いて株式収益率のリスク・プレミアムを計測し、バブル時前後でそれが如何なる動きをしているかを統計的に計測する。例えば、その間、リスク・プレミアムがマイナスになっているとバブルが発生していると想定できるので、この側面からの実証を試みている。 1960年台から計測すると、1980年代からリスク・プレミアムは大きく低下し、以降多少の変動をしながら現在に至っている。特に80年代前半の水準は低く、この時期にバブルが形成され始めたことが示唆される。80年代後半の最も株価が上昇した頃は、配当の期待成長率も高くなり、リスク・プレミアムの水準はむしろノーマルな水準を維持している。 (3)コーポレート・ガバナンスの機能 バブル発生の過程、および崩壊後の現在において企業、銀行等のガバナンスが有効に機能していたか否かを明らかにする。例えばガバナンスが機能している企業においてはバブル発生時に過剰な設備投資、その資金調達としてのエクイティー・ファイナンスに対して規律が働いていたと推測できる。この仮説を、バブル時の日本企業、およびアジア通貨危機前における東アジア諸国の企業を対象に実証的に分析している。 日本においては、メイン・バンクを保有している企業がむしろバブル時に過剰な設備投資に走った形跡があり、メイン・バンクは有効な規律付けを行っていなかったことが示唆される。また、バブル崩壊後、どのようなタイプの企業が過剰設備を抑制し、負債を返済しているかを調べると、外国人株主比率の高い企業が積極的にスリム化していることがわかり、この点でも日本的な経営の企業のスリム化が遅れていることが確認される。 日本企業においては、このようにメイン・バンクではなく、外国人投資家のガバナンスが有効であることを示しているが、アジアの諸国(タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア)でも、傾向として同様な外国人効果が見られるものの、その有意性はそれほど高くないことがわかった。
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