研究概要 |
1999年8月17日に発生したトルコ,イズミット地震(Mw=7.4)によって,アダパザール市においては、約7000人の死者が出た。このアダパザール市は,300mよりも厚い堆積層に覆われた盆地上に位置している。この大被害の要因を解明するために,大地震の発生後,アダパザール市とその周辺で臨時の強震観測(9点)が行われ,多数のデータが得られている。Ozel氏は,まず,これらのデータの整理を行い,データベースを構築した。 次に,アダパザール市の地震波増幅特性を調べるために,同市で得られた記録と近辺の岩盤サイトでの記録の比較を行った。経験的な増幅特性として,市内のS波記録と岩盤サイトのS波記録とのスペクトル比を求めた。その結果,0.5から約5Hzの周波数範囲で2〜5倍ほど市内で増幅されていることがわかった。しかし,それよりも高周波数では,市内では,むしろ減衰されているという結果となった。この一見すると奇異と思われる現象は,このような高周波数では,岩盤サイトでの増幅がより大きいことによると結論づけた。 さらに,地震波の増幅に関する理論であるPropagator Matrix法について学んだ。そして,この理論を用いて,経験的な増幅特性を解釈した。その際に,Ozel氏も参加した微動探査法によるS波速度構造を適用した。 最後に,アダパザール市で得られた記録に見られる,S波に続く長周期の後続波について解析した。その粒子軌跡の解析から,この波が盆地端部で励起された特殊な波(盆地生成表面波)であることを明らかにした。その結果,1999年のイズミット地震によるアダパザール市での大被害は,S波の大きな増幅に加えて,この特殊な表面波がその要因であると結論づけた。 現在,Ozel氏は,これらの研究実績を学術論文に仕上げつつある。
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