本年度は以下の3項目の研究を行った。 (1)金のP波速度の圧力依存性の測定。静水圧下で7.7GPaまでの金のP波速度変化を測定した。 (2)粘弾性体のS波音波物性測定法を開発した。本方法は反射率から音速を決定する方法である。試料内部での音波の透過を要求しないので吸収の大きな物質(Q<10)でも容易に音速と吸収が測定できる。本測定のテストとして、蜂蜜、グリセリン、シリコンオイルの音速測定を行い再現性ある結果が得られた(音速で4%、吸収率で10%)。同時にP波でも同様な測定を行い、文献値と一致する結果をえている。この方法はマグマの音波物性測定に容易に適用できるので、沈み込み層における火成活動に役立つデータが得られるであろう。 (3)周波数領域解析による固体試料の音速と吸収の精密決定法の開発。これまでの音速測定とは異なり、新しい発想に基づく音速測定法を開発した。その過程において本方法は音波吸収の測定にも使えることが明らかになった。 以上の成果をえて、次年度以降の方針にいささかの変更を加えることになった。すなわち音波吸収率の測定が可能になったことにより金の室温一気圧での音速分散と吸収測定の重要性に気がついた。本問題はQは高いとしてこれまで無視されてきたものである。この問題を検討することにより、音速で求められた高周波体積弾性率と圧縮実験に使われる低周波体積弾性率の関係が明らかになると期待される。すなわち現状の金圧力スケールも問題は音速分散に起因する可能性があることである。よって最終年度は、本間題(音速分散と吸収)と含水相鉱物の実測の二つを目標にし研究を進めていく
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