今年度は実験方法の改良と解析方法の確立を行った。 従来試みていたインジウム溶接法はアンビル加熱に伴うさまざまな障害があるため、金箔をボンドとして用いる銅キャップ法の開発を試みた。銅と鉱物の音響インピーダンス差はインジウムと鉱物のそれよりも大きく、そのためより明瞭なシグナルが得られることが明らかになった。また高圧化での実用性についてはMgOの音速を測定することで確認した。今後は今回開発した方法でペロブスカイトの音速の圧力依存性を測定する。 並行して行った解析方法の要旨は以下の通りである。固体試料の音速測定においてバッファロッドと試料の接着に"ボンド"が用いられる。ボンドは有限の厚さ(〜5μm)をもっており、ボンドの両面における多重反射は音速測定における主要な誤差の原因である。デジタルデータとして測定されたパルス波形をフーリエ変換し、周波数領域でボンド効果補正と試料の音波トラベルタイムを決定する方法を開発した。この方法の特徴の一つはボンド材の音波物性を複素反射率法で予め測定していることである。ボンドの厚さを変えて解析を行うと、試料の音速が周波数の関数として求められる。先見的に試料の音速分散はほとんどないと仮定すると、ボンド材の最適厚さと試料の音速の最適値が得られる。1.2mmのガラス板に対するテスト測定の結果、試料音速が5x10^<-4>の精度で求まった。また同時に求まったボンド最適厚さは実測値と調和的である。本成果は高圧化の音速測定の精密化に寄与するところ大である。 さらにダイヤモンドアンビルで行った水素結合の実験成果を2編の論文にまとめた。いずれもすでに刊行されている。
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