本年度は強誘電性液晶(FLC)の偏光赤外スペクトルと時間分解析外スペクトルの測定を行った。時間分解析外スペクトルの解析は各バンドが重なり合ったり、S/Nが悪かったりして必ずしも容易ではない。スペクトルの解析にまず従来法を適用した。その後サンプル-サンプル二次元相関法を用いた。サンプル-サンプル二次元相関法を用いて解析することにより、バンドの分離がよくなったり、ダイナミクスを直接追跡することができ、強誘電性液晶の各セグメントごとの再配向過程を詳しく調べた。これとは別に新しい二次元相関分光法としてMoving Window二次元相関分光法を提案し、いろいろなスペクトル測定例に応用した。 Moving Window二次元相関分光法というのは範囲(温度範囲、pH範囲など)を限定して二次元相関分光法を用いるもので、しかもこの範囲を自動的に動かすことができる。このようにすることによっていろいろな物質がどの温度範囲でどのような構造変化を起こすのかなどについて詳細な知見を得ることができる。また範囲を限定することによって二次元相関分光法による"over-interpretation"を避けることもできる。我々はMoving Window二次元相関分光法を赤外、ラマン、近赤外分光法に適用し、液晶の相転移の他に、オレイン酸やpoly-<N-isopropylacylamide)の相転移、三種類のポリエチレンの構造などを調べた。
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