研究概要 |
本研究は,都市ゴミおよび産業廃棄物の減容化と無害化を目的とした乾式製錬技術を用いた中間処理・二次処理プロセスに関するものである.本研究では,特に二次処理において発生する残滓の最終処分において,溶出などによる環境汚染を引き起こす可能性のある重金属類の塩化揮発による除去という視点から,その熱力学的挙動と速度論の特徴を明らかにすること目的としたものである.重金属の塩化揮発反応においては(1)塩素源における塩素(HCl)発生,(2)重金属酸化物の塩化反応,(3)重金属塩化物の蒸発反応という各素過程が生じる.一方,蒸発した重金属塩化物は,反応路の低温部分で,気相中のH_2OまたはO_2と反応して一部が酸化物となり,塩化物と反応して凝縮した酸塩化物として析出する可能性がある.本研究では,(A)塩化揮発反応の熱力学的解析と速度論的研究 (B)凝縮反応の過飽和度とその速度論的研究 により,重金属酸塩化物の塩化揮発・凝縮反応の熱力学的解析による反応の駆動力の解析と速度論的研究による反応機構の解明を目指している. これまでに過去の速度論的データを基にして理論的解析を反応速度式を提案し,律速段階に関する検討を行った.塩化揮発反応では,温度と塩素および酸素ポテンシャルにより状況はおきく変化し,場合によって塩化物を含む熔融塩相が現れることが推断され,その物質移動が律速する可能性が指摘された.一方,凝縮反応では核形成のために大きな臨界過飽和度必要になる可能性が熱力学的解析により指摘された.また,凝縮反応については水蒸気と塩化鉛の反応を実験的に追求しており,高い水蒸気ポテンシャルにおいても塩化鉛は水蒸気と反応しないことが明らかとなっている. 現在理論的考察を基にして,塩化揮発反応のパラメータを温度,HCl, H_2Oポテンシャルの関数として決定する実験が進行しており,反応機構に関する検討が可能になるものと期待される.
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