研究概要 |
微細な流路構造を持つ生体吸収性樹脂三次元担体の作製プロセスについては,当初は光三次元樹脂の適用を想定し,光感受性の生体吸収性樹脂と光発泡するアゾ化合物による同時発泡重合プロセスを二次元平面内にて確立した.しかしながら,この手法を三次元に適用すると,光照射を行っていない微細流路内に残存した高粘度樹脂を造型後に除去することが困難であり,目的物を作製し得ないことが明らかとなった.そこで,確実に流路構造を形成するために,ポリ乳酸多孔質シートを積層しつつ,多軸微細加工機にて切削を行うことで,細胞を担時するランダム多孔質部(平均孔径約100μm,空隙率90%以上)とマクロな流路ネットワーク(孔径500μm)とを確実に形成することができた.このプロセスを用いて,実際の臓器とほぼ同様な出口と入口とが1つで,内部でマクロ流路が分岐・合流するといった複雑な構造を持つ生体吸収性樹脂担体を形成し得た. 一方,胎児肝細胞のin vitroによる増殖・成熟化促進については,マウス胎児肝を用いて検討を行った.その結果,培地成分として,ニコチンアミド・ジメティルスルフォキシド・オンコスタチンMの三者を共存させることで,播種した細胞集団からの肝前駆細胞(小型肝細胞)の増殖を著しく促進できることを見出した(Cell Transplantation誌に掲載).また.この培地条件とポリ乳酸多孔質担体を用いた三次元培養とを用いることで,その分化機能をさらに高めることができ,たとえばアルブミン分泌能については成熟マウスと同程度の機能を誘導することが可能となった(Cell Transplantation誌掲載,Material Science and Engineering C誌掲載). 以上の2つの成果を元に,次年度においては,ラット胎児肝細胞を材料として用い,血流を導入可能な再構築型肝組織の作製と移植実験を進める.
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