研究概要 |
1.高い光活性をもつ半導体ナノ粒子として、酸化チタンナノクリスタル粒子を取り上げ、従来より簡単でかつ不純物を含まない新規な合成法を、硫酸チタンを原料として開発することを検討した。その結果、以下の二つの方法を見出した。 (1)テトライソプロピロキシチタンから、高効率に硫酸チタンを合成した。沸騰水中で加水分解した生成物を水だけでペースト化し、伝導性ガラス基板の上に被覆した。この方法で、不純物として全く炭素化合物を含まない酸化チタンのナノクリスタルからなるフィルムを作製することに成功した。粒子の状態や膜の性質は、温度やpHよって制御できた。 (2)硫酸チタンの水溶液に硝酸カリウムを加え、伝導性ガラス基板を作用極としてカソード電気分解したところ、焼成後、従来法より遥かに密着性の良い黄化チタンナノクリスタル薄膜を得ることに成功した。これは、還元反応中の局所pH変化を利用する初めての直接付着法である。 2.上記で作製した酸化チタン被覆電極を、蟻酸を光生成正孔のスキャベンジャーとして用いる光電池に応用することを試みた。また、光アノード反応における貴金属ナノ粒子の作用を検討した。その結果、近紫外光の照射下で、銀カソードを用いたときの閉回路電圧-1.235Vと、短絡電流値-3.0mAを得た。この過程で、酸化チタン電極の表面に青色のチタン三価の状態が光生成して伝導性が上がることによる自己高効率化過程が存在することがわかった。一方、蟻酸ラジカルの反応に対して触媒となりうる銀を、ナノ粒子として黄化チタン表面に固定化する効果を検討したが,銀の導入は、電圧、電位の両方を大きく減少させる負の効果を示した。 3.その他、セルロースを用いる新しい金ナノ粒子の合成法の開発に成功したほか、ある種の合金材料が特異的な有機物酸化の触媒となりうることを示唆する結果を得た。詳細は、平成15年度に検討する。
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