研究概要 |
政府では「国家産業技術戦略」が策定され、繊維産業技術開発の目標が設定され、とくにハロゲンフリープロセスの確立が要請されている。ハロゲン系溶剤を用いるドライクリーニングの問題点がクローズアップされてきている現在、羊毛のハロゲンフリーの防縮加工はエコロジーの観点からも強く要請されており、ウオッシャブルウールが切望されている。羊毛の防縮加工法のコンセプトは、羊毛表面のスケール層を取り除くか、覆うことによって、マサツ係数の方向性をなくすことである。現在クロリネーション法、ポリウレタン加工(BAP法)などが実用化されているが、AOXの発生や風合いが硬くなるという欠点がある。 本研究においては、羊毛の防縮加工をパルスコロナと酵素の併用処理で行うことを試みた。パルスコロナは常圧プラズマであるが不活性ガスを使用しないで空気中で行うことができ、設備コストはかからず、ランニングコストも押さえられ,温度上昇もほとんどない。 まず防縮性をパルスコロナ単独処理で検討したが、十分な防縮性は得られなかった。しかしながら、パルスコロナと酵素とくにケラチン分解酵素との併用処理によって、低温プラズマと酵素の併用処理と同じような良好な防縮性が得られることを明らかにした。プロテアーゼでは効果が小さく、また強度低下も大きいが、ケラチナーゼ粗酵素中のブロテアーゼをイオン交換樹脂を用いて取り除いた単一組成のケラチナーゼで処理をすると、強度低下をほとんど起こさないで十分な防縮性が得られた。また電子顕微鏡観察によると羊毛スケールの部分的な損傷とフィブリル化の発生が見られず、実用化可能であることが分かった。現在特許出願中であり、実用化に向けて開発研究を進めている。
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