研究概要 |
研究目的は、本特別研究員(研究分担者)がこれまで形態分類学的に取り組んできたユーラシア大陸産ヒナコウモリ科ホオヒゲコウモリ属Myotis、特に亜属Selysiusの分類学的問題点について、分子系統解析を導入し、日本産の種と比較しながら系統進化学的に明らかにすることである。さらに、北半球に広く分布するホオヒゲコウモリ属の数種について地理的種内変異を分子系統・形態の両面から明らかにする。本年度に得られた成果は以下の通りである。 (1)次の博物館・大学を訪問し、ロシア産および日本産のコウモリ標本を収集した:ロシア科学アカデミー動物学博物館、モスクワ大学、国立科学博物館(東京)、奈良教育大学。 (2)1800年代に採集された乾燥標本からもDNA抽出、ミトコンドリアDNAチトクロムbの遺伝子増幅(PCR)法ができるように、適切なプライマーの設計および反応条件の設定を行った。 (3)本特別研究員が形態的に分類したホオヒゲコウモリMyotis mystacinusの3タイプ(ヨーロッパ型、コーカサス型、北西ロシア型)は、チトクロムb遺伝子の分子系統からも支持された。 (4)形態的には違いのないシベリア産と北海道産ヒメホオヒゲコウモリM.ikonnikoviの間で明瞭な分子系統的相違を見出した。 (5)カグヤコウモリM.fraterおよびM.aurascensなどについて、亜種間・地域集団間の地理的変異を分子系統学的に明らかにした。 (6)以上の成果の一部は、日本動物学会北海道支部会(2002年8月、札幌)、国際シンポジウム"Molecular Perspectives on the Process of Dispersals, Isolations, and Diversifications of Animals and Plants in the East Asian Islands"(2002年11月、沖縄)において口頭発表した。
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