研究概要 |
本特別研究員(研究分担者:カテリナ・チチュリナ)は、当初の研究計画通り、ユーラシア大陸産ヒナコウモリ科の中でも特にホオヒゲコウモリ属(Myotis)(亜属Selysius)に関する分子系統解析および形態分類を行うとともに,同属の数種について地理的種内変異を分子系統・形態の両面から明らかにすることを目的とした。本年度に得られた成果は以下の通りである。 (1)ミトコンドリアDNAのチトクロムネb遺伝子およびND1遺伝子に関する遺伝子増幅法の新しいプライマーを設計し、古いコウモリ標本からもDNA分析を可能にする技術開発を行った。 (2)ホオヒゲコウモリMyotis mystacinusには、形態的にも遺伝的にも異なるヨーロッパ産、コーカサス産および北西ロシア産の3亜種を認め,さらに亜種間の詳細な遺伝距離を計測した。 (3)日本を含むユーラシアに広く分布するヒメホオヒゲコウモリMyotis ikonnikovi、プラントホオヒゲコウモリMyotis brandtii、ウスリホオヒゲコウモリM.gracilis、M.aurascensなどの分子に基づく地理的変異と亜種分類の検討を行った。 (4)日本におけるMyotis属について、大陸産の地理的変異と比較しながら、分類学上の再検討を行った。 これらの成果の一部は、2003年度の日本哺乳類学会、東アジアの分子系統地理に関する国際シンポジウム(韓国)、日本哺乳類学会などにおいて講演発表し、日本およびアジアのコウモリ研究者と有意義な意見交換を行った。また、1つの論文を国際英文誌へ投稿中、2つの論文を投稿するため現在まとめているところである。
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