冠水による最大の被害の一つは光合成速度の低下によるバイオマスの減少や生長の抑制である。その理由としていろいろなことが考えられているが、オオムギの場合は不明な点が多い。そこで、本研究では品種間差異について検討した。その結果、冠水処理によって、光合成速度や蒸散速度の低下が認められたが、そこには品種間差異が認められた。この光合成速度の動さは、可溶性糖類の代謝と関係していると考えられる。 冠水による酸素不足が起こると、作物は気孔が閉じて光合成速度が低下させるだけでなく、分子状酸素が還元することによって遊離活性酸素などの毒性物質が生じることが明らかとなっている。そのため、抗酸化酵素の活性について多くの検討が行われているが、その結果は対象植物や処理によって異なっている。そこで、本研究ではオオムギ品種を用いて、この点について検討を行なった。すなわち、冠水抵抗性が異なる2品種をポット栽培し、冠水処理を行い、対照区と比較検討した。その結果、抵抗性品種に比較して感受性品種の葉においてmalondialdehydeの含量が有意に増えた。superoxide dismutaseについては一定の傾向が認められなかったが、peroxidaseは前期は減少し、後期に増加した。また、catalaseやglutathione reductaseが増加した。冠水抵抗性における品種間差異は、酵素活性の程度の差で識別できる可能性が考えられた。
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