研究課題
オオムギを水耕栽培する際に、マンガン(Mn)濃度を通常の0.25μMから25μMに上昇させMn過剰処理すると生育量の低下、古葉に褐色斑点、根よりムギネ酸分泌促進などのMn過剰誘導鉄(Fe)欠乏症状を生ずる。Mn過剰時のムギネ酸分泌の促進現象は本研究者らによる新知見である。このMn過剰処理において、水耕培地のカリウム(K)濃度を通常の3mMから30mMに増加させて栽培すると、生育量の増加、葉緑素含量の増加、根よりのムギネ酸分泌の低下などMn過剰鉄欠乏症状の軽減が見られた。この時、植物1gあたりの元素含量を測定したところ、培地のK濃度の増加によりFe含量が増加し、Mn含量が半減した。また、亜鉛と銅含量は変化がなかった。マグネシウムとカルシウムの濃度はKとの競合のため減少した。このことは、KがFe吸収を促進し、Mn吸収を抑制することにより、Mn過剰誘導Fe欠乏を軽減することを示唆している。また、イネについても同様であった。イネの培地のMnの通常濃度である10μMを1mMに増加すると激甚なFe欠乏誘導鉄欠乏が見られたが、K濃度を1mMから10mMに増加させると症状が大きく軽減された。このイネ科におけるKの生理的機能について今後、研究する必要がある。また、オオムギにおけるムギネ酸-Fe錯体の吸収能力の日周変動を測定した。人工気象室内でFe欠乏、正常条件下で生育させた植物に対し、1日24時間を4時間ごとに区切り、放射性^<59>Feを投与し、その時間内のFe吸収量を測定した。その結果、ムギネ酸Feの吸収能力は明期と暗期で異なるが、その明暗期間内ではほぼ一定であることが示された。ムギネ酸分泌は明期開始後5時間に起こるという日周変動を示すが、光または温度が変動しない場合、吸収能力は変動しないことがわかった。また、その吸収能力は根の重量あたりで示すと鉄欠、正常両区で同じであった。
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