木材を熱処理することにより木材中の結晶化度が増加し、さらに処理を続けることにより結晶化度が減少するすることがこれまで認められている。これまで、乾燥状態での結晶性の変化が調べられていたが、Md.Tariqur Rabbani Bhuiyan氏は木材中に水分が存在する状態で熱処理を行い、乾燥状態での熱処理との比較検討を行った。水分存在下では、乾燥状態に比較し、早い時間経過で結晶性に変化が見られ、また、最大の結晶化度も倍程度に大きかった。水分が存在するかしないかで、熱によるセルロース結晶の成長ののメカニズムが異なることが推定される。本研究では、熱により成長した結晶が水分の存在下でどのような挙動をするかを調べ、結晶の成長の機構を検討する。本年度得られた結果を要約すると次のようになる。水分存在下での熱処理で得られた結晶性は水分中、RH85%の状態で変化が見られなかった。一方水分非存在下での熱処理で得られた結晶性は、水分中、RH85%の状態では、未処理の結晶化度までは結晶化度の減少が見られ、未処理の結晶化度以下では再結晶化が観測された。80℃の温水中で処理をすることにより結晶化度の増加が見られた。木材中の結晶性の変化に水が大きく係わっていることが示唆された。 さらに、現在、圧電率を中心に電気、弾性のヒステリシス現象について、バクテリアセルローズの誘電性、圧電性等について、また、木材、セルロースおよびセルロース誘導体の焦電性、熱刺激電流について検討を始めた。
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