これまで、Dr.Bhuiyan氏は木材の結晶性と圧電効果の関係について研究を進めてきた。木材中に水分が存在する状態で熱処理を行い、乾燥状態での熱処理との比較検討を行った。J.of wood scienceに投稿し、論文として掲載されることとなった(Study on crystalline behavior of heat treated wood cellulose under treatments in water)。 温度上昇過程と温度下降過程での力学および電気的特性のヒステレシス現象について繰り返し測定を行い検討をした。弾性率においてはヒステレシスは観測されなかったが、誘電率では僅かであるが、観測された。しかるに圧電率においてはヒステレシスが著しく観測された。一般に温度上昇とともに圧電率はその値は上昇する。温度上昇過程での圧電率の実数部の同じ温度での値は温度下降過程での値より大きく、また緩和を示す虚数部のピークは上昇過程での場合のほうが低い温度で出現した。この結果について学会誌に投稿するための論文を作成中で、本年の4月の初めに投稿予定である。さらに、ラミー(セルロース)の圧電率の温度・周波数測定を行った。木材の圧電率の温度・周波数特性の研究報告はこれまでなされているがのセルロースそのもについての研究報告はない。木材の場合は測定周波数10Hzで、低温度領域において約-100℃および-30℃に緩和が見られるが、ラミーでは、約-100℃にいて緩和がみられ、-30℃では緩和が観測されない。この研究結果についても、論文として投稿の準備をしている。現在、セルロース誘導体および木材の熱刺激電流についての実験を行っている。セルロースの誘導体として圧電率の高いシアノエチル化ヒドロキシエチルセルロース、シアノエチルセルロースを、また木材についても実験を行っている。いずれの場合にもポーリングにより熱刺激電流の大幅な増加が見られ、木材は約10倍の値を、二つのセルロース誘導体は約100倍の値を示した。
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