【目的】腹腔や腸管に存在するB-1細胞は自然抗体を産生して粘膜免疫系の一翼を担っている。我々はIL-5Rα欠損(IL-5Rα^<-/->)マウスの腹腔B-1細胞が減少しその細胞径が縮小していること、腸管粘膜組織のB-1細胞由来のIgA産生細胞が減少していることなどIL-5がB-1細胞の増殖因子として重要であることをを示してきた。しかし、IL-5によるB-1細胞の生存維持、活性化の機構、生体内の粘膜免疫活性化における意義についてまだ不明な点が多く、検討を加えている。 【方法と結果】1)8週齢の野生型マウスに抗IL-5抗体を腹腔内投与し、B-1細胞の変化を解析した。抗IL-5抗体投与後6日目には細胞数・径ともにIL-5Rα^<-/->マウスと同程度に減少し、正常に分化したB-1細胞の維持にIL-5が重要であることが示唆された。2)野生型あるいはIL-5Rα^<-/->マウスより得た腹腔内細胞を野生型マウスに移入した。野生型B-1細胞の移入30日後の生存率は85%であることに対し、IL-5Rα^<-/->B-1細胞の移入30日後の生存率は50%以下であった。腹腔内細胞をB-1細胞を含み全リンパ球を欠くRAG2^<-/->マウスに移入すると、野生型B-1細胞の細胞数は移入30日後2倍以上に増加するが、IL-5Rα^<-/->B-1細胞の細胞数は1/2に減少した。このことから、B-1細胞の定常数存在する環境下での生存、B-1細胞が減少した環境下での恒常性維持のための増殖を制御し、B-1細胞の維持にIL-5/IL-5R系が重要であることがわかった。3)野生型あるいはIL-5Rα^<-/->マウスよりB-1細胞だけを精製しRAG2^<-/->マウスに移入した。T細胞がない環境にもかかわらず、野生型B-1細胞の細胞数は移入30日後2倍以上増加した。一方、IL-5Rα^<-/->B-1細胞では有意な増加が認められなかった。この結果からT細胞以外のIL-5産生細胞がB-1細胞の恒常性維持を支持することが示唆された。 【今後の研究】1)In situ hybridization法や免疫染色法を行い、IL-5産生細胞を調べる。2)野生型あるいはIL-5Rα^<-/->マウスより得たB-1細胞からRNAを取り、GeneChipにより遺伝子発現を比較分析する。3)野生型及びIL-5Rα^<-/->B-1細胞の抗CD40抗体やLPSに対する活性化反応を調べる。
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