研究課題
自然水域においてMicrocystis aeruginosaのアオコが短時間で顕著に減少することが観察されている。その機構を解明することは、このアオコの抑制手法を開発する上で極めて重要である。このM.aeruginosaの減少の因果関係として、M.aeruginosaの増殖によって生産される細胞外排出溶存有機物(EOM)が細菌を増加させ、ウイルスがこの細菌に感染し増殖し、さらにこの増殖したウイルスがM.aeruginosaに感染し、顕著なM.aeruginosaの減少を引き起こすことを想定した。つまり細菌とウイルスの介在によってM.aeruginosaの増殖が結果的にM.aeruginosa自身の減少を引き起こすと仮定した。実験は、1)細菌の成長に対するEOMの役割を評価し、2)細菌の有り無しの条件下でウィルスの殺藻効果を比較し、3)2)で細菌有りでより殺藻効果が見られた時、ウイルス、細菌、M.aeruginosaの関係を解析し、仮説を実証する目的で行った。得られた実験結果は以下の通りであった。M.aeruginosaのEOMのバクテリアの増加に対する影響は紫外線(UV)の有無によって異なった。UV処理前のEOMはバクテリアにとって易分解性物質であったが、UV処理後は難分解性物質に変わった。また、UV処理後EOMの濃度の変化はなかったが、EOMの成分の中で親水性塩基が減少し、親水性酸が増加した。M.aeruginosaに対するウィルスの殺藻効果は、ある時期によって異なり、殺藻ウィルス群集の組成や量が時期によって異なることを強く示唆した。また、バクテリアが有り無しの条件下でのウィルスの殺藻効果の差はなかった。現段階では、M.aeruginosaのEOMが細菌を増加させることは明らかになったが、細菌を介在したウィルスの殺藻効果に対してのEOMの役割はまだ説明できていない。
すべて その他
すべて 文献書誌 (1件)