研究概要 |
熱帯人と温帯人の生物学的パラメーター、特に体温や発汗現象、月経周期、感情障害などについて研究を行うことを目的としている。今までに得られた結果として、日中の体温の最高値は日本人よりベトナム人が高く,夜間の体温の最低値は日本人よりベトナム人が低いという結果であった。また,ベトナムの若い女性は高い環境温度と湿度のために、月経周期が長く、夏期の感情障害の頻度が高い。ベトナム人は80%の湿度で高い室温(25℃〜27℃)を好む。これらのことはベトナム人の暑熱環境への順化を示していると言える。これら暑熱環境への順化機構を解明するために,熱帯地域での実験を継続し,ベトナム人とベトナムに生活する日本人を対象にして,発汗が開始する鼓膜温度の閾値,体温リズムを調節するメラトニンの挙動を調べる。現在、ベトナム、ハノイ大学の学生200人を対象に、春と秋の季節における月経周期とうつ状態のアンケート(Self-Rating Depression Scale Disorder, SDS)を用いて調査を行っている。また、ベトナムの農村において,ベトナム戦争時における残留枯葉剤や農薬などの環境ホルモンがこれらの生理的パラメーターにどのように影響しているかを調べる。またこれらを日本型の人工化学物質による影響と比較検討することを目的とする。ベトナムにおける農薬の影響の重大性について、新聞や科学雑誌に掲載されている。この問題を検討するために、文献を収集し、ベトナムにおける農薬の影響に関する情報を集めている。また、ベトナムの3カ所(ハノイ、タントリ、クアンニン)において、農薬が人々の健康にどのような影響を及ぼすかについてのアンケート調査を行っている。これらの調査の結果はまだ整理できていないが、ベトナムと日本の比較を通してこれからのベトナムの将来に重要な示唆を与えるものと思われる。
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