金魚の視神経は切断しても再生し、切断端から視神経が再伸長し標的視蓋に到達し、やがて視覚機能も回復する。この長い視神経再生過程のうち特に再生後期に視蓋で働く分子を探索し、シナプス再結合、再編成機構の分子機序を解明するのが本実験の目的である。まずWGA-HRPを用いたトレーシング法により再生線維がいつ視蓋に到達するかを調べた。その結果切断後3週から視蓋に到達し始め約4〜5週でほぼ完了した。次いで視覚機能の回復過程を2匹の視神経切断金魚の追尾率で追跡した。ここでいう追尾とは1匹の金魚が他の金魚を追いかける行動で、2匹の金魚のなす、角度、2点間距離同方向のベクトルから計測した。その結果視神経切断約4〜6ヶ月で2匹の金魚の追尾率が正常に復した。以上から金魚は約1ヶ月で再生線維が視蓋に到達するもその後4〜5ヶ月かけて再生繊維と視蓋神経細胞とのシナプス再編成が完了することが証明された。そこで視神経切断後60日(2ヶ月)の金魚視蓋から抽出したmRNAを用いcDNAラィブラリーを作成した。視神経切断後30日および60日の金魚視蓋から調整したmRNAより合成したcDNAをプローブとしてディファレンシャルハイブリダイゼーション法により、このライブラリーをスクリーニングした。視神経切断した後、晩期に発現が増加するクローンを選択し現在数個のポジティブクローンを得ている。またNorthern blotでもこの発現増加を確かめた。現在cDNAの全長をシーケンスするとともにISH法にて遺伝子の局在を検索している所である。
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