研究概要 |
本年度は、本研究の全研究期間において使用する試験片を製作した(一部は未だ製作中)。また、き裂を含むコンクリート構造物の鉄筋腐食の検出実験を行うための電気化学測定システムを購入し、予備的な実験を行うとともに、既存のパーソナルコンピュータを用いて境界要素法による逆解析のプログラムの整備を行った。 さらに、以前から継続して研究してきた遺伝的アルゴリズム(ジェネティックアルゴリズム、GA)と境界要素法を用いた逆解析による構造物中の鉄筋腐食を検出するための数値シミュレーションの結果をまとめ、インドネシアのバタムで開催された国際会議NAE2003(Numerical Analysis in Engineering 2003,工学における数値解析 2003)において発表した。 すなわち、従来の逆解析手法では、腐食領域を円や楕円で近似し、その中心位置、半径、長径、短径、長軸の方向などを未知パラメータとしていたのに対して、鉄筋網目の1マスの1辺がが腐食していれば1、腐食していなければ0として、鉄筋網目をコーディングして遺伝子を作成し、コンクリート表面の数少ない点における電位の測定値と境界要素法による解析値を比較し、その差が出来るだけ小さくなるような遺伝子を見出すことにより腐食部を見出す方法を提案した。 従来の方法では腐食領域の形状(円または楕円のように)や個数を予め仮定しなければならなかったのに対して、遺伝的アルゴリズムを用いる方法ではそのような仮定の必要がなくなった。また、円や楕円では近似できないようなコの字型やカギ型などの腐食領域も扱えるようになった。しかし、計算時間が膨大になった。そこで、階層的な検索方法を導入して、この困難を解決した。
|