研究概要 |
研究者の所属するグループが既往研究において行った,林地斜面土層から採取した大型不撹乱試料中の水移動に関する実験,および林地斜面土層の2次元断面における不均質水移動の詳細な観測の結果を整理した。その上で,実験・観測データに基づいて水移動に関わる土壌物理特性を抽出する手法について検討した。また,既存のシミュレーションモデルのレビューを行い,土壌の不均質性をRichards式へ組み込む際の問題点について整理した。さらに,土壌水文モデルで解析を行う水文データを取得する目的で,観測森林流域を設定するために,現地踏査を行い,土層厚分布,地下水位存在状況,土壌物理特性の予備的な試験を実施した。その上で,設定した森林流域において,水文観測を開始した。本研究で構築する土壌水文モデルは,水資源管理や洪水・土砂災害発生予測を意図したものであるため,降雨量,流域からの流出量,流域内部の地下水位と土壌水分の空間分布の観測を行う装置を設置した。この際土壌水分については,不均質な水移動の実態を解明する目的で,TDR式水分計による体積含水率の計測を,高空間分解能で行うようにした。計測結果は,土壌の表層においては,季節毎に湿りやすい場所,湿りにくい場所が変化することを示していた。これに対して下層では,湿りやすい場所,湿りにくい場所が比較的安定しており,常に決まった部位にプレファレンシャルフローが存在していることが示唆された。
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